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最高裁判所第三小法廷 昭和30年(オ)242号 判決

尾道市吉和町吉浦一六二三番地の一

上告人

若林守雄

右訴訟代理人弁護士

森井孫市

広島県加茂郡竹原町大字竹原甲六四三番地の三〇

被上告人

久保卓蔵

右当事者間の商品代金請求事件について、広島高等裁判所が昭和二九年一二月一〇日言渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人森井孫市の上告理由について。

所論は、原審は、上告人の本件契約が委託販売であるという主張を排斥し判示のような売買と認定するに当り、証人の伝聞証言を採用したのは採証法則等に違背するといい、よつて民訴一八五条に違反すると主張する。しかし原審の採用した第一審の証人の証言に伝聞証言と認められる供述の存することはうかがわれるが、民事訴訟においては、伝聞証言であるというだけで直ちに証拠能力を否定されるものではないから、原審が判示のような採証方法によつて事実認定をしても違法とはいえない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己)

昭和三〇年(オ)第二四二号

上告人 若林守雄

被上告人 久保卓蔵

上告代理人森井孫市の上告理由

第一点 原判決は本訴の只一の争点てある八ツ手肥料十六〆匁入一〇〇俵の取引か上告人の主張する通り売買の委託てあるか、又被上告人の主張する通り単純の売買てあるかの点の判断に付き原審証人木村修三、永田九一の各証言及被上告人の訊問の結果によれは右は売買てあることか認められる之れに反する証人千応山明行岡野幸三の各証言及上告人本人の供述は信用し難しと判示して上告人の主張を排斥したのてあるか。

右原判決は民事訴訟法第一八五条の解釈を誤りて訴訟に於ける重要なる上告人の主張を不当に判定して排斥した違法のあるものてある夫れは次の理由によるものてある。

原審の措信採用した右証人木村修三、永田九一の各証言は何れも取引契約の以後に於て而も被上告人久保より伝聞した事をそのまゝ陳述したものてある。故に被上告人か之等の口を借りて述へたと同様て言はゞ蓄音機の発音にも等しく其内容は只代金の残金か存在する事実に関するものに過きぬ証言てあるから之れを以て本件の取引か売買の委託てあるか又夫れか単純なる売買てあるかを判断するの証拠価値は存しないのてある。

之れに反し原審か信用し難しと説示した証人千応山明行の証言及上告人本人の供述は何れも本件の取引に関し約束を為す其現場に於て直接に自己か見聞して知り得たる事実て而も其内容は本件の取引か委託てあつた事実を証明する証言てあるから之れを採証の法則、条理、吾人の一般経験則によつて口頭弁論の全趣旨及ひ証拠調の結果を斟酌し以て双方当事者の主張の何れか真実てあるかを判断するに於ては本件訴訟の記録上証拠からして上告人の主張する委託販売存在の事実か真実てあるとして原審に於て認容せらるべきてある、然るに事此処に出てずして為された原判決は法令の解釈に関する重要なる主張に付き判断を誤つて為された違法ある判決てあつて破毀を免れさるものと思料する。

以上

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